ランニング中に心拍数を計測している場合、ランニング中の心拍数が正常なのかどうか気になることがあるかもしれません。この時、何が正常かについてどのように判断すればよいのでしょうか。他の人にとっての普通が、あなたにとって普通ではないかもしれません。
ランニング中に心拍数と身体に何か起こっているか理解することは、トレーニングの目標を設定する方法を知る上で非常に重要です。ニューヨークの理学療法センター Finish Line Physical Therapy の理学療法士であり、Profunctional Running(ランニングのプロフェッショナルコーチング・理学療法)の創設者であるJason Lakritz(理学療法士、理学療法博士)に、ランニング中の心拍数について話を聞きました。
最大心拍数
ランニング中の心拍数に影響を与える変動について理解する前に、自分のパラメータを知ることが必要です。つまり最大心拍数についてです。
最大心拍数は、心拍が拍動できる1分間あたりの最大の心拍数です。通常最大心拍数に達するには、何らかの激しい身体活動か、心臓が最大のストレスにさらされているときです。
正確な最大心拍数を見つけるのには少し難しい場合があります。心拍センサーを用いて実地テストを行い、最大心拍数に達する条件を満たす必要があります。Polarのランニングパフォーマンステストは、このテストを行える一つの優れた方法です。最大心拍の85%に達することで、最高スコアが計算されます。
または自分で計算してみましょう。「「最大心拍数は、220―年齢」で大まかに推定できます。この推定値はあくまでも大まかなものです。また最大心拍数は通常、年齢とともに低下します。」とLakritzは言います。
最大心拍数の計算
ランニングにおける心拍ゾーンとエネルギー
最大心拍数がわかったら、これを使って5つの心拍ゾーンがわかります。各ゾーンは最大心拍数に対する割合です。これは実施する運動の強度を表し、どれだけ自分に負荷を掛けているか分かります。 .
Zone | Intensity | Percentage of Max HR |
Zone 1 | 非常に軽い | 50–60% |
Zone 2 | 軽い | 60–70% |
Zone 3 | 中 | 70–80% |
Zone 4 | ハード | 80–90% |
Zone 5 | 最大 | 90–100% |
異なる心拍ゾーンでワークアウトすることは、それぞれのゾーンが身体に異なるメリットをもたらすため、総合的にみても良いことです。適切な組み合わせを実現するために、心拍トレーニングプランを作成する人もいます。
ランニングに関しては、心拍ゾーンを少し絞り込むことができます。「ほとんどの心拍数トレーニングプログラムは5つのゾーンに振り分けられますが、3つに単純化することもできます。体内には、さまざまな強度でトレーニングするときに使用される特定のエネルギーシステムがあります。これらの各システムに心拍数を割り当てることができます。」―Lakritz氏
有酸素系システム
有酸素系システムは心拍ゾーンの1と2(最大心拍数の50~70%)になります。脂肪を使ってエネルギーを作る、ゆっくりとしたシステムですが、乳酸を作らないので長時間維持することができます。「これはジョギング中などに使用しているシステムです。」―Lakritz氏
乳酸性発生限界値システム
乳酸発生限界値は、心拍数ゾーン3(最大心拍数の70~80%)になります。これは、有酸素系と無酸素系の組み合わせであり、脂肪と炭水化物を組み合わせてエネルギーを生成します。
「このシステムを使ってトレーニングを行うと、身体はエネルギーをより早く必要とするため、炭水化物を主に使用します。身体が炭水化物を使ってエネルギーを生成する方法は、非常に速いです。問題は、身体が炭水化物を使用してエネルギーを生成する際に、乳酸と呼ばれる副産物が生成されることです。乳酸発生限界値では、身体はこの副産物を作るのと同じ速さで排出することができます。テンポランニングをイメージしてみてください。」―とLakritzは言います。
無酸素系システム
無酸素系システムは、心拍ゾーン4と5(最大心拍数の80~95%)になります。主に炭水化物を使用して高強度のランニングを行うため、エネルギーがすぐに必要になります。「身体は炭水化物をすばやく消費しますが、乳酸を排出するスピードが追い付きません。乳酸を排出するために減速が必要となり、身体が素早く動くことができるのは、それまでの短い間だけです」とLakritzは言います. 「無酸素系システムは、インターバル走などのスピードトレーニングで使用されます。」
通常、ランニング時にはこれら3つのゾーンのいずれかに当てはまりますが、これらのシステムは明確に分かれているのではなく、連続しています。「走るスピードが速くなるにつれて、エネルギーとして使用される炭水化物と脂肪の量は、各システムを移行するにつれて徐々に変化します」とラクリッツは言います。「これらのシステムは、身体がどのようにエネルギーを使用するかについてわかりやすくしたものです。」
ランニングにおける正常な心拍数
心拍数に関しては、「正常」というものはありません。人によってそれぞれ異なり、またランニング中の心拍数は、日によっても下記に記載するようなさまざまな影響を受ける可能性もあります。
どのようなエクササイズを行う場合でも、ワークアウトの目標は最大心拍数の50~85%の間であるべきです。そのため、ランニングを始めようとするときには、心拍ゾーン1~2で行えるジョギングによる有酸素運動がオススメです。
Lakritz 氏は、経験を積むにつれて心拍ゾーン3を目指すことを提案しています。「ランニング時の心拍数は、70~80%の範囲におさめる必要があります。もしランニング時の心拍数がこの範囲に達しない場合は、有酸素系システムをより多く取り入れたトレーニングしていることになり、心拍数がこの範囲を超えている場合には、無酸素系システムをより多く取り入れたトレーニングしていることになります。」
初めてゾーン3でのランニングを試みるときには、各ランニング後に十分な休憩を取る必要があることを覚えておいてください。休む時間は人によってもそれぞれです。「ランナーが乳酸発生限界値の心拍数で走るトレーニングを積めば積むほど、必要な休息は少なくなります。」とLakritzは言います。
ワークアウトの目標を無酸素系のトレーニングに決めた場合には、ランニング時の心拍数を80 ~95% (心拍ゾーン4~5) にする必要があります。「各インターバルのペースを同じに保ちたい場合は、より多くの休息が必要になります。」Lakritzは言います。
ランニング時の心拍数に影響する要因
主な要因が平均心拍数に大きな影響を与える可能性があります。下記のようなものが含まれます。
- 年齢
- 体重
- フィットネスレベル/有酸素能力
- 遺伝的要因
ただし日によっても異なります。以下のような要因がランニング時の心拍数に影響を与える可能性もあります。
- 温度と湿度
- 水分補給
- カフェイン、アルコール、ニコチン
- 高度
- 栄養状態
- 休息
- ストレスや不安
- 健康状態
- 薬
そのため、調子が良くても心拍数が高くなる場合があることを覚えておいてください。また適切な水分補給を行い、効果的に身体に栄養補給することは欠かせません。心拍数の高さが気になる場合は、めまいや息切れを感じ始めたら、これらを思い出し無理せず休んでください。
心拍センサーを持っていない場合はどうしたらいいですか?
心拍センサーを使用することは、ランニング時の心拍数がすばやく簡単にわかる最も効果的な方法です。ですが、データなしでランニングを行っている場合には、他の物理的な指標を使って、トレーニング時のシステムを推測できます。「私は『会話テスト』を用いるのが好きです」とLakritzは言います。
「完全な文章で話すことができれば、おそらく有酸素系のゾーンにいます。 一度に1つの文章を言える場合は、おそらく乳酸発生限界値のゾーンにいます。一度に1~2単語しか話せない場合は、おそらく無酸素系のゾーンにいます。」
この方法に科学的根拠はありませんが、 Polarのスポーツウォッチを着用せずにランニングに出かけた場合の経験則です。でも、まずは時計を忘れないのが一番です。
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ポラールのブログで紹介される内容は、必ずしも全ての方に当てはまるわけではございません。新しいトレーニングを試す際には、事前に医師やトレーナーと相談してください。