ランニングはシンプルなスポーツですが、ランニングに関する誤解や噂が、新しいランナーの参入や既存ランナーが更に高みを目指してトレーニングをすることの妨げになることがあります。さらに悪いことに、これらの噂・説の中のいくつかは、怪我につながる可能性があり、最終的にはランニングをやめるという判断につながることもあります。
今回のグローバルランニングデーを祝うため、ポラールリサーチセンターの主任研究員であるユッシ・ペルトネンは、7つの一般的なランニングの噂・説を検証していきます。それでは始めましょう!
1. 説:誰でもランニングは出来る
回答:本当です。現在既に医学的または健康上の問題がなければ、誰でも走ることができます。 背の高い・低い体格が良い・細身である、年齢が若い・年配である、どの場合でも皆さんランニングは出来ます。私たちは2足歩行を始めて200万年も続けているのですから。
初めから誰もがマラソンの準備ができているわけではなく、ほんの3-5キロ走る準備が出来ていないこともあります。 ランニングにはある程度の筋力が必要であるため、怪我、太りすぎ、または不健康な生活習慣が相対的な筋力を低下させ、ランニングをするのが難しくなる可能性があります。 その場合は重要なのはペースを自身でコントロールすることです。より速いランニングはより多くの筋肉を必要とします。 私たち人間は生き物として生理学的・心理学的に机に座ってではなく、走ることに適応して生まれてきているはずです。
「私たちの体は基本的にランニングすることに適したものになっています。他の動物と比較して、私たちはあまり速くありませんが、長い距離を走ることに優れています。ランニングは体力を向上させますが、長時間ランニングすると、心臓は筋肉だけでなく脳にも多くの血液を送り込みます。身体的体力の向上に加えて良い副作用として、ランニングは問題解決スキルを向上させ、創造性を高め、気分を高揚させることができます」と、ポラールの主任研究員であるユッシ・ペルトネンは述べています。
2. 説:ランナーはウォーキングはせずにランニングだけをする
回答:そんなことはありません。 ランニング中にウォーキングをすることは、ランニングに良くないと言われますが、実は、ランニングのトレーニング計画にウォーキングトレーニングを組み込むことには利点があります。
トップランナーにとっても、インターバルや長距離ウォークなどのウォーキングトレーニングは、パフォーマンスのリカバリーをする日に行う大切なトレーニングです。 意図的なウオーキングは、持久力を高め、関節や筋肉を休ませ、ランニングによる身体の緊張を和らげるのに役立ちます。
走ることが出来るかどうか不安な人にとって、ウォーキングは走り始めるための優れた第一歩です。 散歩に出かけ、途中で数分間走って心拍数を上げるだけです。 やがて、ランニングをする時間は楽になり、より多くの距離を走れるようになります。
3. 説:心拍数トレーニングはプロだけが行うもの
回答:そんなことはありません。 心拍数トレーニングは複雑で分かりにくく、プロのアスリートが更にパフォーマンスを上げるために行うものと思われるかもしれません。しかし、本当は心拍数のトレーニングは簡単にできます。
スポーツウォッチ、心拍計の機能の進化で、あらゆるレベルのランナーは、表示される自身の心拍数に合わせてトレーニングすることで、フィットネスとパフォーマンスを向上させることができます。 必要なのは、トレーニング中に心拍数をチェックできるデバイスと、個人の心拍数ゾーンを理解することだけです。
「一定の基本的なルールを理解すれば、心拍数のトレーニングは簡単です」とユッシ・ペルトネンは言います。 「最初に知っておくべきことは、心拍数ゾーンは各自の最大心拍数に関連して定義されるということです。 通常、誰もがゾーン1〜2(最大心拍数の50〜70%)に到達でき、ゾーン3は少し頑張れば到達でき、ゾーン4と5(80%以上)は高強度のインターバルトレーニングで到達できます。 2つ目に、筋肉とは異なり、心拍数は自発的な神経系によって制御されていません。 したがって、運動を開始すると、心拍数は遅れて反応しますので、運動の開始時またはインターバルの開始時に、心拍数が実際の運動量・強度とは一致しないことを意味します。 そのため、運動の終了時またはインターバルの終了時に、目的の心拍数ゾーンに到達しているかを確認することをお勧めします。」
心拍数トレーニングは、あなたが無理をしすぎていないか、ちょうどよい強度で行っているか、または十分な強度に達していないかを客観的に診断できるので、主観的でなく本当のあなたの努力レベルが分かります。努力(期待強度)レベルと心拍数を一致させると、今のトレーニングに適した強度でトレーニングしているかどうかが、わかります。」 心拍数トレーニングは、ランニングを始めた方がランニングを行う際にすぐに疲れ果ててしまうのを防ぐのにも役立ちます。
4. 説:ランニングを数日休むとパフォーマンスが落ちてしまう
回答:そんなことはありません。一般的に言われていることとは異なり、トレーニングを数日休むことでパフォーマンス・フィットネスレベルに大きな影響を与えることはありません。 研究によると、3週間何も運動をしないとVO2maxレベルの15〜25%の低下をもたらしますが、私たちの日常生活では、3週間何も運動をしないということはめったにありません。
長期的には、リカバリーの軽いトレーニングの日と休息日は健康を改善するのに役立ちます。 定期的に運動する場合、常に最高のパフォーマンスを維持することはできません。 マラソンのような長距離のレースの前には調整が必要です。トレーニングには、ハードで激しい運動や休息とリカバリーだけでなく、低強度のトレーニングも必要です。 休息日はオーバートレーニングを防ぎ、より早くパフォーマンスを回復することができます。
自身のパフォーマンスの進捗を確認するために、最新のスポーツウォッチでは、ラボでテストを行うことなく、VO2max(最大酸素摂取量)が日々のトレーニングの経過とともにどのように変化するかで確認できます。
5. 説:マラソンをすると健康になる
回答:本当です。フルマラソンは大きな身体的な負荷が大きく、怪我の危険性もありますが、レース当日の42.195kmにある程度リスクがあるとしても、フルマラソンに向けたトレーニングを日々行うことは健康な身体を作ります。
マラソン向けのトレーニングが適切に行われている場合、行っているトレーニングは身体的に非常に有益です。 あなたの筋肉と骨はより強くなり、健康的な体重を維持し、心血管系はより健康になるでしょう。 さらに、大きな目標を追いかけることで、自尊心と自信を高めることができます。
ただし、ランニングのメリットを享受するためにフルマラソンをする必要はありません。 研究によると、ランナーは非ランナーよりもすべての死因、特に心血管系の死亡のリスクが低いことが示されています。 平均して、わずか1日あたり5〜10分を低速(1キロメートルあたり6分以上)で行っても、すべての死因、特に心血管系の死亡率が明らかに減少します。(1)を参照
そして、他に何もないとしても、走ることはあなたの生活にハリを与えます。走り終わったとき(10回の走りのうち約8回)に、 Polarを使っている多くのユーザーのデータから、「素晴らしい」あるいは「気分が良い」と感じていることが分かっています。
6. 説:ほぼすべてのランナーは怪我をしたことがある
回答:時と場合によります。ランナーがシンスプリントや足底筋膜炎などの怪我をしやすい傾向があるのは事実ですが、ランニングによる怪我を防ぐ方法については実証済みの対策があります。
筋力トレーニング、ストレッチ運動、およびトレーニングの強度を徐々に上げることで、怪我のリスクを減らすことができます。 特に、始めたばかりのランナーは、あまりにも早い段階で、あまり多くのことをしすぎないようにし、ランニングによって引き起こされる身体的な負荷に、体が適応するのに十分な時間を取る必要があります。
たとえば、上り坂を走ると、他の筋肉群を強化し(下記(2)参照)、膝への負担を軽減することができます。これは、ランニングで最も負荷のかかる関節です(下記の(3)参照)。 クロストレーニングや他のスポーツの練習も、より強く、より良いランナーになるために不可欠です。
7. 説:空腹でランニングをするのは良い
回答:ある意味本当です。 ランナーにとって、食べ物は燃料でランニングの前にランナーが食べるものは、ランニングのパフォーマンスに直接影響します。 これは、ランナーがランニングの前に炭水化物を摂取する必要があるという意味ではありません。 実際、空腹時ランニングにはいくつかの利点があります。 それでは、ランナーは何カロリーを事前に食べるべきですか? 空腹で走るべきですか?
空腹で走ることは、体に蓄えたエネルギーを使うようになります。 蓄えられたグリコーゲンはエネルギー源としては不十分なので、蓄えられた脂肪から必要なエネルギーを捻出するようになります。
また、ランニングは大量の熱を生成し(大量の汗をかき)、蓄えられたエネルギーの消化を促進されますので、 暑い日に空腹で走ると多くの水分と体内に蓄えられたエネルギー源を消費します。
ただし、蓄積されたグリコーゲンがゼロの空腹状態では、高強度のインターバルトレーニングや、負荷の大きいハイスピードのランニングセッションをすることは困難になりますので、空腹時のランニングは、低強度のスピードでリカバリーの要素を取り入れたものにしましょう。
さあ、ランニングを始める用意は出来ましたか?
ランニングについてのいくつかの説を実証してきましたので、安心してランニングを始める準備が出来たと思います。 ランニングを客観的に評価・サポートしてくれるランニングウォッチを付けて、ランニングシューズを履いて、走り出しましょう!
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参照
- Lee, Duck-Chul, Russell R. Pate, Carl J. Lavie, Xuemei Sui, Timothy S. Church, and Steven N. Blair. 2014. “Leisure-Time Running Reduces All-Cause and Cardiovascular Mortality Risk.” Journal of the American College of Cardiology 64 (5): 472–81.
- Gent, R. N. van, D. Siem, M. van Middelkoop, A. G. van Os, S. M. A. Bierma-Zeinstra, and B. W. Koes. 2007. “Incidence and Determinants of Lower Extremity Running Injuries in Long Distance Runners: A Systematic Review.”
- Roberts, T. J., and R. A. Belliveau. 2005. “Sources of Mechanical Power for Uphill Running in Humans.” The Journal of Experimental Biology 208 (Pt 10): 1963–70.
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ポラールのブログで紹介される内容は、必ずしも全ての方に当てはまるわけではございません。新しいトレーニングを試す際には、事前に医師やトレーナーと相談してください。